2026/9/2

260902_Zモニター-令和9年度予算成立戦略

令和9年度予算成立戦略

―参院通過の鍵とは?―

*動画解説は ⭐️

 

1.導入:「46年ぶりの綱渡り」から半年—令和9年度予算成立に向けて

令和8年度予算は、衆院解散・11年ぶりの暫定予算編成・参院での46年ぶりの委員長裁決という異例続きの末、2026年4月7日にようやく成立しました。そして今、令和9年度(2027年度)予算の概算要求が締め切られ、総額は143兆円前後と4年連続で過去最大を更新しています。あの綱渡りが、また繰り返されるのでしょうか。それとも、今度は違う道をたどれるのでしょうか。これが今回の記事の出発点です。

前回の記事では、衆院解散から46年ぶりの委員長裁決に至るまでの経緯を詳しく確認しました。今回はその続編として、規模も内容もさらに大きくなった令和9年度予算が、同じ壁にぶつかるのか、それとも乗り越えられるのかを一緒に見ていきたいと思います。

令和9年度予算は、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の"完成形"(本番)とも位置づけられています。しかも今回は、令和8年度のような差し迫った解散・総選挙の予定がないという違いもあります。時間的な余裕があれば、今度こそすんなり決まるのでしょうか。それとも、時間があっても越えられない別の壁が待っているのでしょうか。

あなたは、去年(令和8年度予算)の"綱渡り"のニュースを見て、今年(令和9年度予算)はどうなると感じていましたか。

 

2.衆院は圧勝、参院は"5議席不足"—令和9年度予算が抱える数の矛盾

結論から言うと、令和9年度予算が年度内に成立するかどうかの核心は、衆院と参院で"数の力"がまるで違うという矛盾にあります。衆院では自民党が歴史的な勝利を収めているのに、参院では過半数に届いていない。このねじれに近い構造が、今回の予算審議の最大の焦点になりそうです。

2026年2月8日投開票の総選挙で、自民党は戦後最多となる316議席を獲得し、衆院では与党過半数を回復しました。ここだけを見れば、予算はすんなり通りそうに思えます。ところが参院はこの動きと連動していません。参院は2025年7月選挙のままで改選がなく、報道によれば自民・維新の合計は過半数(125議席)に対して約5議席足りない「少数与党」状態が続いているとされています。

なぜこうなったかというと、2025年10月に公明党が自公連立から離脱したことが大きく関係しています。高市政権はその後、自民・維新の2党連立を軸にしながら、法案ごとに公明党や国民民主党などと個別に協力する、いわば「自維国公」的な枠組みで国会運営を続けています。つまり、予算を通すたびに、その都度、協力してくれる相手を探して合意を積み上げていく必要があるということです。

しかも令和9年度予算そのものが、概算要求段階で143兆円前後という過去最大規模に膨らんでいます。規模が大きくなればなるほど、当然ながら合意形成のハードルも上がりやすくなります。衆院で圧勝しているはずなのに、なぜ予算がすんなり決まらないのか、疑問に思ったことはありませんか。

 

3.「143兆円」は概算要求、予算折衝は今から

結論として、143兆円前後という数字は財務省・経済産業省などの一次資料で確認できる事実ですが、これはあくまで各省庁が「これだけ欲しい」と要求した段階の金額であり、令和9年度予算の最終額そのものではありません。12月に政府案が決まる過程で、財務省の査定によって圧縮される可能性が高いのです。

「過去最大」「4年連続の記録更新」という部分は事実として扱えますが、「この143兆円がそのまま予算になる」と考えるのは早計だと私は感じています。ニュースの見出しだけを見ていると、つい両者を混同しがちですが、概算要求と当初予算案は別物だと意識しておきたいところです。

また、参院の議席不足(自民・維新合計で過半数に約5議席不足)という数字も、私が確認できた範囲では日経報道をもとにしたものです。参院は改選されていないため基本的には有効な数値と考えられますが、こうした議席構成の数字が気になる方は、ご自身でも最新の情報を確認していただくのがよいかもしれません。

令和8年度予算をめぐる「独り相撲」「数頼み政治の限界」といった評価も、東洋経済など特定メディアの論評であり、46年ぶりの委員長裁決という"事実"そのものとは分けて受け止める必要があります。ニュースで見る「予算〇兆円」という数字、それが要求段階の金額なのか、決定した金額なのか、意識したことはありますか。

 

4.予算が膨らむ4つの理由—シーリング撤廃・上限なし投資枠・防衛費2%・補正依存脱却

結論として、令和9年度の概算要求が4年連続で過去最大の143兆円前後まで膨らんだ背景には、大きく4つの理由が重なっていると考えられます。

1つ目は、高市政権が重視する成長・危機管理投資の分野で、これまであった要求上限(シーリング)が撤廃されたことです。2つ目は、新設された「強く豊かな日本」投資枠に、上限を設けないまま10兆円を超える要求が集まったことです。経済産業省だけでも、この投資枠に6兆3,116億円を要求しており、AI・半導体・GX(グリーントランスフォーメーション)といった成長分野への集中投資が進もうとしています。

3つ目は、これまで補正予算で賄っていた経常的な経費を、当初予算に一体化していく方針への転換です。4つ目は、金利上昇にともなう国債費の増加です。加えて、令和9年度は2022年に決定された防衛力整備計画で「GDP比2%への到達」が目標として掲げられている節目の年にあたります。実際にこの目標を達成できるかどうかは予算編成が終わってみないと分からない未来の話ですが、それを見据えた予算になることは確かそうです。

こうした流れの背景には、骨太方針2026が掲げる「補正予算依存からの脱却」という方針転換もあります。社会保障関係費の自然増も、例年どおり継続的な増加圧力として存在していますが、令和9年度の具体的な金額については今回、私自身まだ確認しきれていません。「AI・半導体に上限なしで投資する」というニュース、あなたは期待と不安、どちらを強く感じますか。

 

5.「責任ある積極財政」か「バラマキ」か—評価が真っ二つに割れる理由

結論として、令和9年度予算の規模・内容をめぐる評価は、大きく分けて4つの立場に割れており、単純な二項対立では語りきれない状況になっています。

高市政権や高橋洋一氏などの積極財政推進派は、デフレ脱却と成長投資を優先すべき局面であり、シーリング撤廃やAI・半導体への集中投資は「責任ある」範囲内の必要な支出だと主張しています。一方、小黒一正氏をはじめとする財政規律重視派は、143兆円という要求規模自体が「平時としては異例」であり、金利上昇による国債費の急増とあわせて財政悪化のリスクを警戒すべきだと指摘しています。

さらに、日本共産党の機関紙や一部のジャーナリストは「バラマキノミクス」と厳しく批判する一方、PRESIDENT Onlineのように「バラマキとは全くの別物だ」として擁護する立場も存在し、評価はまさに真っ二つに割れています。加えて参政党の神谷宗幣氏のように、高市政権の「責任ある積極財政」すら生ぬるいとし、財政収支の黒字化目標そのものを見直すべきだという、より積極的な財政拡大を求める立場もあります。

こうした中、高市内閣の支持率は2026年8月に低下傾向を見せています(共同通信50.2%、NHK53%、いずれも発足以来最低水準)。この支持率低下が財政拡大路線への警戒感によるものだと断定できる根拠は今のところ見当たりませんが、そう見る向きもあるようです。「政府がもっとお金を使うべきだ」という声と、「使いすぎては危険だ」という声、あなたはどちらに近いと感じますか。

私自身は、この評価の割れ方そのものが、令和9年度予算を年度内に成立させるうえでの大きな変数になると感じています。ではこの数の壁を、高市政権はどう乗り越えようとしているのでしょうか。

 

6.高市政権が使える3つのカード—年度内成立に向けた現実的な戦略とは

結論から言うと、令和9年度予算が年度内に成立するかどうかは、①国民民主党・公明党との個別政策協議、②日本維新の会との連立深化、③参政党など少数会派の一部取り込み、という3枚のカードを高市政権がどう使いこなすかにかかっていると私は見ています。

令和8年度と大きく違うのは、次の国政選挙(参院選は2028年7月、衆院の任期満了は2028年10月)まで差し迫った選挙がないという点です。解散による審議時間の圧迫という、あの「独り相撲」を招いた最大の要因が、令和9年度には基本的に存在しません。8月に概算要求、12月に政府案決定、1〜3月に国会審議という、いわば通常のスケジュールで進められる可能性が高く、時間的な余裕は前回より確保しやすい環境にあると言えそうです。

とはいえ、時間があれば数の壁が消えるわけではありません。参院の議席構成そのものは基本的に変わっていないため、①〜③のどのカードを切るか、あるいは組み合わせるかが引き続き問われます。①は「年収の壁」の178万円引き上げのように個別政策ごとに合意を積み上げてきた手法で、これまで実績はあるものの、国民民主党の玉木代表は令和8年度予算をめぐって、当初は協力姿勢を示しながら解散表明を境に態度を一転させた前例があります。党利・政局的な計算で立場が流動しやすい会派だという点は、頭の片隅に入れておきたいところです。②は自維国公の枠組みをさらに一歩進める方向、③は参政党が財政収支黒字化目標そのものの見直しまで求める、高市政権より積極的な財政拡大派であることを踏まえると、協力のハードルは①②とはまた違う種類のものになりそうです。高市内閣の支持率低下が、野党側に予算修正を迫る交渉材料を与えている可能性も指摘できますが、これはあくまで一つの見方として受け止めておきたいと思います。

もしあなたが高市首相の立場だったら、国民民主党・公明党・参政党のうち、どの会派との協力を最優先しますか。

 

7.まとめ:令和9年度予算、私たちがチェックすべき3つのタイミング

結論として、令和9年度予算が年度内に成立するかどうかは、衆院での圧勝が参院の"5議席不足"という壁を越えられるかにかかっており、それを読み解くには「事実」(議席構成や概算要求の中身)と「評価が割れる論争」(責任ある積極財政かバラマキか)を切り分けて理解することが大切だと、私は感じています。

ここまでの内容を振り返ってみましょう。衆院では自民党が316議席という歴史的圧勝を収めた一方、参院では自民・維新の合計が過半数に約5議席足りない状態が続いています(この議席数は日経報道ベースの数値で、最新の会派構成は参議院公式サイトでの確認をおすすめします)。概算要求段階の143兆円前後という数字は、シーリング撤廃・上限なしの「強く豊かな日本」投資枠・防衛費GDP比2%到達という目標年・補正依存脱却という4つの要因が重なって膨らんだものですが、これはあくまで要求段階の数字であり、まだ確定額ではありません。この規模感をめぐる「責任ある積極財政」か「バラマキ」かという評価は、少なくとも4つの立場に割れたままです。そして年度内成立の鍵は、国民民主党・公明党との個別政策協議、維新との連立深化、参政党など少数会派の取り込みという3枚のカードをどう使うかにかかっている、というのがここまでの整理でした。

次にこのテーマのニュースに触れるとき、私がおすすめしたいのは、次の3つのタイミングに注目する習慣です。ひとつは年末の与党内政治決着(予算編成の基本方針や政府案の閣議決定)、ふたつめは1月の通常国会召集・予算審議入り、みっつめは3月末の年度内成立の成否です。この3つを押さえておくだけで、断片的なニュースに振り回されず、全体の流れを掴みやすくなるのではないかと思います。

次に令和9年度予算編成のニュースを見るとき、あなたは3つのタイミングのうち、どれを一番先に確かめたいと思いますか。

8.あわせて読みたい、令和9年度予算のゆくえをもっと深く知るための3記事

今回の記事とあわせて読んでいただくと、令和9年度予算をめぐる政局・財政論争がさらに立体的に見えてくる過去記事を3本ご紹介します。

1)財務省を動かせる総理と、動かされる総理能登と熊本の震災対応から⭐️

予算の「執行スピード」という切り口から、政権のリーダーシップと予算運営の関係を扱った記事です。令和9年度予算がどう動かされていくかを見るうえでも、参考になる視点だと思います。

2)2027年総裁選、財政攻防の行方

少数与党下での財政運営をめぐる政治的な駆け引きや、「債務残高対GDP比」という指標を軸にした攻防を扱った記事です。今回の政局分析の背景理解を補強してくれると思います。

3)「国の借金1500兆円」は本当に隠された数字なのか?

予算・財政に関する数字を一次資料で検証するという、今回の「情報の信憑性」セクションと同じアプローチを扱った記事です。数字の出どころを確かめる習慣を、さらに補強してくれるのではないでしょうか。

*動画解説は ⭐️

 
以上です。