2025/6/2

250602_AGI社会-縄文人の精神性ver02

縄文人の精神性がAGI社会の羅針盤になる理由

―5000年前のクルミが語る“心の技術”―

1.AIが最適解をくれる時代、あなたは“人間である意味”をどこに見出しますか?

AIが知識や判断まで肩代わりし始めた今、「人間らしさとは何か」を見つめ直すヒントが、約5,000年前の埼玉県の縄文ムラに眠っているかもしれません。今回はそんなお話です。

検索すれば何でも分かり、迷ったらAIが最適解を示してくれる。AGI(人間のように幅広い知的作業をこなすAI)が、いよいよ現実味を帯びてきました。本当に便利な時代ですよね。

でも、ふと立ち止まって考えたことはありませんか? 「それでも、私たちは“人間”である意味をどこに見出せばいいのだろう?」と。暮らしは便利になったのに、誰かと顔を合わせて話す時間は減り、自然に触れる機会も遠のいていく。手間をかけて何かを作るより、ボタン一つで済ませることが当たり前になっていく。

この記事では、埼玉県北本市にある「デーノタメ遺跡」に残された縄文人の暮らしを手がかりに、AIでは代わりのきかない“心の技術”について考えていきます。ただ、「縄文ってロマンがあるよね」で終わらせるつもりはありません。私なりに発掘調査の報告書まで確かめて、分かっている事実と、私の想像とを分けてお伝えします。

2.AIが万能になるほど、人間の役割が曖昧になる―“考える”と“感じる”の居場所はどこへ

私が本当に怖いと感じているのは、仕事が減ることそのものよりも、「考える」「感じる」「分かち合う」ことの価値が曖昧になり、人間の役割が見えにくくなっていくことです。

会話の相手、お客さま対応、医療の診断、小説や音楽づくりまで、AIは“人間の知的な活動”を次々に担い始めています。仕事への影響は、データにも少しずつ表れてきました。スタンフォード大学の研究では、AIの影響を受けやすい職種で働く22〜25歳の雇用が、影響を受けにくい職種の同世代と比べて相対的に19%減っていました(2026年6月時点)。日本でも、マーサーの調査で「将来AIで職を失うのが不安」と答えた従業員は37%と、2023年の23%から増えています。

ただし、公平のために添えておくと、スタンフォードの研究でも経済全体での大規模な失業は確認されておらず、研究者自身も「原因がAIだとは断定できない」と留保しています。リクルートワークス研究所は「AIで失われるのは職ではなく、仕事の中の作業(タスク)だ」と冷静に分析しています。

私が気になるのは、むしろ心の変化のほうです。米国のPew調査では、「AIで創造的に考える力が悪くなる」と答えた人が53%、「意味のある人間関係を築く力が悪くなる」と答えた人が50%にのぼりました。国内でも、50〜60代の38.8%が「AIにしか話していない秘密がある」と答えています(BEYOND AGE調査)。

AIが最適化してくれるほど、人間の出番が減っていく。そんな逆説が、静かに進んでいるのかもしれません。AIが最適解をくれたとき、あなたは胸を張って「これは自分で選んだ」と言えそうですか?

3.関東最大級の縄文ムラ「デーノタメ遺跡」を調べてみた―確かめられたことと、想像のこと

先に結論をお伝えします。デーノタメ遺跡は2024年に国の史跡になった関東最大級の縄文集落で、漆で彩った器、ヒスイの大きな玉、クルミの形をした土製品、リスの歯形が残るクルミの殻は、北本市の発掘報告書で確かめることができました。一方で、「縄文人がお酒を造っていた」はまだ推測の段階で、「リスと恵みを分け合っていた」というのは私の想像です。

まず基本から。デーノタメ遺跡は埼玉県北本市にあり、約5,000年前から約3,800年前にかけての集落と水場が残っています。中期の集落は長さ210mの環状(輪の形)で、関東でも最大級。土器の型式が途切れずに出てくることから、約1,200年ものあいだ人が暮らし続けたと考えられています。台地の下の湿地に泥炭層があって、ふつうは腐ってなくなる漆や木、木の実が残っていたことから、「縄文のタイムカプセル」とも呼ばれています。

報告書で確認できた主なものは、次のとおりです。

  • 漆の器:黒漆の下地に赤漆で文様を描いた土器が多く出土。木に漆を塗った器の装飾部や、漆塗りのしゃもじも見つかっています。ウルシの花粉や赤い顔料の塊も出ていて、報告書は「ウルシ林を管理し、樹液を採って漆工芸を担う人々がいた可能性が高い」としています。報告書によると、同じ時代の青森・三内丸山遺跡では漆製品がごくわずかで、この時期の漆工芸の中心は関東にあったと考えられるそうです。これには私も驚きました。
  • ヒスイの大きな玉:分析でヒスイ製と分かった「大珠(たいしゅ)」が出ています。お守りや儀礼に使われたとも考えられていますが、用途ははっきりしていません。
  • クルミ塚:クルミの殻がまとまった場所が6か所、破片も含めて1万1,894点。その中に、人が石で割った跡のある殻と、リスやネズミの仲間がかじった歯形の残る殻が、ほぼ同じくらいの割合で混じっていた場所もありました。
  • クルミ形の土製品:半分に割ったクルミをかたどった土製品が2点。うち1点は内側に漆が塗られていました。全国的にも珍しく、豊作を祈る道具だったのでは、という見方が紹介されています。
  • ベリー類:ブドウの仲間やニワトコ、クワなどの種、甘酸っぱい実を搾ったかすも見つかっています。

ここで、分けておきたいことがあります。果実を搾っていたことから「果実酒を楽しんでいたのかもしれない」という見方はありますが、お酒を造った証拠が見つかったわけではありません。リスの歯形の殻も、報告書は「自然に積もったものが混ざった」と解釈していて、縄文人がリスと分け合ったという記録ではありません。

もう一つ、縄文人は自然をただ拝んでいたわけでもなさそうです。花粉の分析から、湿地に生えていたハンノキを伐って、わざわざクルミの木に植え替えた形跡があるとされています。自然に積極的に手を入れ、育てていた人たちだったと言えそうです。

「縄文人は自然と共生していた」と聞いて、あなたはどんな暮らしを思い浮かべますか? 私は、思っていたよりずっと“賢く、手間を惜しまない人たち”だったのだと感じました。

4.数字にならないものは“ムダ”なのか―効率化が切り捨ててきたもの

人間らしさが居場所を失いつつある背景には、数字にできないもの、時間のかかるものを「非効率」として片づけてきた価値観があるのではないか、と私は考えています。そして縄文人の暮らしは、その価値観に一つの問いを投げかけているように見えます。

たとえば、子どもが泥だらけになって夢中で遊ぶ時間。職人が一つの器に何日もかける工程。何の目的もなく、森や川辺でぼんやり過ごすひととき。生産性のものさしで測れば、どれも「ムダ」に分類されてしまいそうです。でも、本当にそうでしょうか?

今は仕事も学びも数値目標に置き換えられ、「どれだけ成果を出したか」「どれだけ早くできたか」で評価されることが多いですよね。スケジュールはAIが組み、家電はネットでつながり、食事の栄養バランスまでアプリが計算してくれる。確かに合理的です。ただ、その流れの中で「不便の中にあった工夫」や「余白の中で生まれる気づき」が、知らないうちに削られてはいないでしょうか。“考えなくてもAIが決めてくれる”状態に慣れてしまうと、自分で選ぶ手応えや、驚き、感謝といった感情まで薄れていく可能性があります。私が一番怖いのは、その変化に自分で気づけなくなることです。

ここで、デーノタメの縄文人を思い出してみてください。彼らは決して“効率を知らない人たち”ではありませんでした。ハンノキをクルミに植え替え、ウルシ林を管理するほど、暮らしを合理的に組み立てていました。それなのに、食べられもしないクルミ形の土製品をつくり、その内側にまで漆を塗った。浅鉢(浅いお皿のような器)を、赤と黒の文様で彩った。

合理的に暮らしを回しながら、数字にならない「祈り」や「美しさ」にも手間を惜しまなかった。私はこれを“意味のある非効率”と呼んでみたいと思います。

最近、目的も効率も考えずに、何かに夢中になった時間はありましたか?

5.「献立はAI、人生の決断は人」―期待と孤独のはざまで揺れる私たちの本音

私たちの多くは、AIの便利さを受け入れながらも、心の問題や人生の決断は人に委ねたいと感じているようです。そしてその裏で、約4割の人が孤独感を抱えています。

AIを使ったことのある20代以上1,203人への調査(Helpfeel、2025年12月発表)を見てみます。Excelの関数は81.2%、献立決めは69.2%がAIに相談すると答えました。60代以上の女性では、献立をAIに相談する人が83.3%にのぼり、世代の中でもとくに使いこなしているようです。ところが、キャリアの決断になると「人に相談する」が53.2%で上回り、恋人やパートナーの悩みも40代以上では人を選ぶ人が過半数でした。電話窓口についても、「複雑な用件は人間に対応してほしい」という人が6割を超える調査があります。

AIへの気持ちは、期待と不安が同居しています。AIの進化に期待する人が91.5%、不安を持つ人が92.8%という調査もあれば(TrendLife、2026年3月)、「AIに仕事を奪われる不安がある」が65.8%という調査もあります。

見過ごせないのが孤独です。内閣府の令和7年の調査では、孤独感が「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と答えた人を合わせると、約4割(37.7%)にのぼりました。ネット上でも「便利になったはずなのに、なぜか孤独を感じる」「仕事よりも“生きがい”を奪われそうで怖い」といった声をよく見かけます。

ただ、「AIは冷たいから人がいい」と単純には言えないのも事実です。米国の医学誌に載った2023年の研究では、患者の質問への回答で、ChatGPTの回答が「共感的」と評価された割合は45.1%、医師は4.6%でした。AIは、やさしい言葉を出すのがとても上手なのです。だとすると、私たちが人に求めているのは“言葉”そのものではなく、一緒に時間を過ごし、手間をかけ合う“体験”なのかもしれません。

内閣府の世論調査では、「これからは心の豊かさ」が52.2%、「まだ物の豊かさ」が46.6%でした。物価が上がる中で、まず生活を、という気持ちも当然ありますよね。

あなたは、どんなことならAIに任せ、どんなことは人に相談したいですか?

では、縄文人の暮らしから、私たちはどんな“心の技術”を取り戻せるのでしょうか。そして、それをAI時代の暮らしや、もう一つの収入源にどう生かしていけるのか。その具体的な習慣を、この先でお話しします。

6.縄文人に学ぶ“心の技術”――「手間・感謝・分かち合い」を暮らしと稼ぎに取り戻す3つの習慣

AI時代に私たちが取り戻したい“心の技術”は、デーノタメの縄文人の暮らしに重ねると、「手間をかけてつくる」「恵みに感謝し、祈る」「分かち合い、祝う」の3つにまとめられるのではないか、と私は考えています。そしてこの3つを日々の習慣として育てることが、AIに代わられにくい“あなたならではの価値”、ひいてはもう一つの収入源の芽になる可能性もあります。

大事な前提を一つ。縄文人は、AIや機械を知らなかったから手間をかけたわけではありません。クルミを植え替え、ウルシ林を管理するほど合理的な人たちでした。だから私たちも、AIを拒む必要はないと思います。合理的な部分はAIに任せ、意味のある部分は自分の手に残す。この役割分担こそが、縄文人から学べる一番の知恵ではないでしょうか。

習慣1 手間をかけてつくる:過程を味わう時間を、週に一つ

漆の器は、ウルシの木を育て、樹液を採り、何度も塗り重ねてようやく仕上がります。デーノタメの人たちは、その長い工程を暮らしの中に組み込んでいました。

私たちにできることは、もっと小さくて構いません。出汁から取る味噌汁、手書きの手紙、ベランダの家庭菜園、木や布を使った小さな手仕事。週に一つだけ、「早く終わらせる」ではなく「過程を味わう」時間をつくってみる。AIにはレシピや段取りの下調べを手伝ってもらい、仕上げは自分の手でやる、という使い方もおすすめです。

手間をかけた時間には、「自分がやった」という手応えが残ります。これは、AIが最適解を出してくれるほど貴重になっていく感覚かもしれません。

習慣2 恵みに感謝し、祈る:感じたことを一行だけ書き留める

実用性のないクルミ形の土製品に、わざわざ漆まで塗った。そこには、暮らしを支えるクルミへの感謝や、豊作への祈りが込められていたのかもしれません(あくまで一つの解釈です)。

現代の私たちにも、「いただきます」や、初詣・お盆・お月見といった季節の行事が残っています。これを流さずに、少しだけ意識して味わってみる。そして「今日の栗ご飯は、山の恵みだなと感じた」くらいの一行を、手帳やスマホに書き留めておく。

前の章で、AIの回答が医師より「共感的」と評価された研究を紹介しました。AIはやさしい言葉を上手に出力できます。けれど、秋の実りを口にして胸がじんわりする体験を、AI自身が生きているわけではありません。出力と体験は違う。この違いこそ、私たちの手元に残る領域の一つだと私は感じています。

習慣3 分かち合い、祝う:分かち合う相手を、人に戻していく

クルミ塚は、集落の人たちが木の実を集め、割り、食べた営みの跡です。果実を搾って飲み物にしていた可能性もあり、そこには皆で囲む食卓や、ささやかな祝いの時間があったのでは、と想像が膨らみます。リスがかじった殻が同じ場所から出てくるのを見ると、人も動物も同じ森の恵みで生きていたんだな、としみじみ感じます(ここは私の想像です)。

一方で今の日本は、約4割の人が孤独感を抱え、50〜60代の38.8%が「AIにしか話していない秘密がある」と答える時代です。AIに相談して気持ちが楽になるのは、悪いことではありません。ただ、分かち合う相手がAIだけになると、人と喜びを分け合う体験は少しずつ遠のいていくように思います。

家族や友人と一緒に料理をする、地域のお祭りや清掃に顔を出す、趣味の集まりに参加する。月に一度でもいいので、人と手間を分け合う場を一つ持ってみる。AI企業Anthropicのトップであるダリオ・アモデイ氏も、「意味は主に人間関係やつながりから生まれ、経済的な労働から生まれるのではない」と書いています。AIをつくる側の人がそう語っているのは、興味深いと思いませんか?

3つの習慣を、もう一つの収入源の視点につなげる

成果を約束できるものではありませんが、次のような切り口は検討してみる価値があると私は考えています。

  • 手間そのものが価値になる分野:手づくりの品、料理や保存食、家庭菜園の野菜など、「時間をかけてつくったこと」自体を喜んでもらえる分野です。ハンドメイド販売や、地域のマルシェへの出店といった形で、小さく試すことができます。
  • 土地の物語を伝える体験:デーノタメ遺跡のように、身近な場所にも驚くような歴史が眠っています。地元の史跡や自然、行事を調べて、自分の言葉で案内したり、散策会や体験会を企画したりする。そこに人が集まり、分かち合いが生まれる可能性があります。
  • 自分の実感を言葉にする発信:習慣2で書き留めた一行メモは、そのままnoteやSNSの種になります。AIが書く一般論ではなく、あなたが手を動かし、感じた体験の記録は、読む人の心に届きやすいのではないでしょうか。
  • 副業選びの物差しを持つ「AIでいいや」と思われない価値は何か。この問いを、副業を選ぶときの基準にしてみてはいかがでしょうか。効率だけで勝負する分野では、AIと価格競争になりかねません。手間・感謝・分かち合いが込められたものは、その土俵から少し離れたところにあるように感じます。

「手間・感謝・分かち合い」のうち、今のあなたの暮らしで一番手薄なのはどれでしょうか? そして、あなたが時間を忘れて手間をかけられることは、何か思い当たりますか?

7.5000年前のクルミ塚が指す羅針盤―「人間らしくあること」を選び取る

AIが最適解を出してくれる時代だからこそ、デーノタメの縄文人が約1,200年の暮らしの中で大切にしてきたと思われる「手間・感謝・分かち合い」を、私たち自身が意識して選び取ることが、迷わないための羅針盤になる可能性があります。

振り返ってみます。AIは会話や創作、判断にまで入り込み、「考える」「感じる」「分かち合う」ことの価値が見えにくくなりつつあります。その背景には、数字にならないものを“ムダ”として片づけてきた価値観がありそうです。一方、報告書で確かめたデーノタメの縄文人は、クルミを植え替え、ウルシ林を管理するほど合理的でありながら、クルミ形の土製品に漆を塗り、器を赤と黒で彩っていました。合理と“意味のある非効率”を両立させていたわけです。お酒やリスとの分かち合いのように、想像の部分もあります。それでも、手間を惜しまず、恵みに感謝し、仲間と分かち合う暮らしの姿は、報告書の数字からも十分に伝わってきました。

物価が上がる今、「心の豊かさより、まず生活」と感じる方がいるのも当然です。ただ、収入の柱を増やそうと動くときにこそ、「自分は何に手間をかけたいのか」「誰と分かち合いたいのか」という軸があるかどうかで、選ぶ道は変わってくるのではないでしょうか。

まずは今週、手間をかける時間を一つ、感謝を一行、人と分かち合う場を一つ。小さな一歩で構いません。

あなたは、何のために生きていますか? そして、誰と、何を大切にして生きていきたいですか? 5000年前のクルミ塚は、そんな問いを私たちに投げかけているように思えます。

8.あわせて読みたい―AGI時代の“人間らしさ”を考える記事

あわせて読んでいただくと、AI時代の人間らしさや、これからの収入の柱について、さらに考えを深めるきっかけになるかと思います。

1)世界が失った“感性”を日本は守っていた―AGI時代にこそ必要な文明論⭐

自然に神を見てきた日本人の感性は、一度失いかけて取り戻してきたものでした。今回の縄文人の暮らしと地続きの、日本人の自然観をたどった一本です。

2)AIが進化しても『人にしかできないこと』とは何か?AGI社会の本質に迫る⭐

AIが出力する「共感の言葉」と、人が生きる「共感の体験」はどう違うのか。今回の「出力と体験は違う」という考え方を、もう一歩掘り下げています。

3)「自分専属のAGI」が来る日—OpenAI大改革の裏側とAI副業への影響⭐

AIが秘書のように暮らしへ入り込む未来で、何をAIに任せ、何を自分の手に残すのか。今回の「合理はAIに、意味は自分に」を、副業の視点から考えたい方におすすめです。

次は「日本人の自然観」と「人にしかできないこと」、どちらから読んでみますか? 自分の手と心で感じたことを手がかりに考え続けることが、AI時代の一番の備えになるのかもしれません。

以上です。